• 期 日:2016年3月11日(金)15時30分〜17時
  • 場 所:厚沢部町町民交流センターあゆみ
  • パネラー:藤岡俊吾(カンペシーノ店主)、荒木敬仁・川合龍成(地域おこし協力隊)、能代晶子(鶉中学校教諭)
  • コーディネーター:かとうけいこ(観光と食のコーディネーター)

 

≪註・以下の記録は会場で速記されたものなので、記録としては粗い所もある。ただ雰囲気は伝わると思います。

 

パネラーは全員町外出身者

かとう:20分位打ち合わせをしていたら、盛り上がってしまった。何も決まっていないパネルディスカッションははじめて。男性陣はよその町からきた人間ばかりが登壇してる。コーディネーターをしていると会場にバンバン当てていくから、そのつもりでおねがいします。

能代:厚沢部町立鶉中学校で働いています。この町に来て6年目になります。出身は江差町、乙部町です。この地域を離れたのは大学4年間だけ東京に行っていた。最初は若松に行って、乙部、今の鶉に来た。厚沢部の良い所を伝えたい。

かとう:趣味は?

能代:ドライブ。法定速度で飛ばしてドライブしている。

川合:地域おこし協力隊の26歳で、東京都狛江市出身。狛江市は半径2kmの円に収まる面積が小さな市だが、人口は檜山地域を上回る7万8千人ほどいる。住宅ばかりの地域で生まれ育った。3年前に協力隊として厚沢部に来た。東京の法政大学で福祉と地域おこしを学んでいたが、厚沢部町で実践したいと考えた。今は町が100%出資する過疎づくり会社で働いている。

かとう:厚沢部以外で赴任地として迷ったところはないか。

川合:大学の先輩が活動していたため、そのような制度があることは大学1年の頃から知っていた。ただ、どうしても協力隊になりたいと考えていたわけではないので、全国の自治体の情報を探していたわけではなく、選択肢の一つとして念頭にあるイメージだった。たまたま厚沢部町の協力隊の募集を担当していた方が(前述の)先輩の知り合いで、強烈に誘われ、気づいたら来ることになっていた。厚沢部町にも活動内容にも魅力を感じていたので、自分はこういう運命なのだと思ってこの町でがんばろうと思った。厚沢部町で協力隊という仕事があったことが縁になった。

 

荒木:平成3年生まれの24歳で、埼玉県八潮市で生まれそこで育った。東京都千葉の県境に近いところで、自転車で10分で東京、30分で千葉だった。大学は千葉大学の園芸学部で、人と自然に係る仕事をしたいと思い就職活動をしていた。その中で厚沢部町の協力隊の募集を知り、内定ももらっていたが、厚沢部町の協力隊を選んだ。

かとう:就職しようとしていた職種はどんな業界?

荒木:教育業界で、そこでは人と自然とは関われないと思った。

藤岡:生まれは東京の調布で、幼稚園の年長から高校卒業までは名古屋。大学生から北海道に来て、北海道のほうが長い。北大水産学部で函館で大学生活を送った。船の仕事が面白いと思って、特設専攻科という船の運転免許みたいなものをとるコースに進んだ。その後、水産会社の航海士となって、全長100mくらいの大きな船で、船内で加工してぎょそうに下ろして冷凍する。3ヶ月位が一航海。厚沢部に来たのは会社に入社するちょっと前で、長期に船に乗るので住むところはどこでもよいと言われた。知り合いの農家さんもいたのでその縁で厚沢部に来た。

親は横浜に住んでいたけれど、あまりイメージできなかったので厚沢部に住むことにした。5年半勤めた後退職した。退職した時にはどうしようかなと思ったけど、函館で大工さんの養成コースの職業訓練を受けた。とても面白くて、厚沢部から通うのは苦にならなかった。本職の大工さんの手伝いをして住宅建設に関わった。その後、カレー屋をいつかやりたいな、と思っていて、自分で建てたらいいんじゃないか、と思った。船に乗ってた時の資金が開業資金になっているのだけど、開業して雑誌などで紹介してもらったり常連さんも何組かいらしてくれて、3年半続けられている。

かとう:私は北海道の179の町を全部行った。175の町に宿泊した。あと4つで全部制覇したことになる。一月のうちに3分の1しか札幌にいない。夜に香港から帰ってきて、千歳空港に泊まって、ここにきた。世界に通用するグリーンツーリズムを北大の農学部で勉強している。飛行機とバスと公共交通を使って行っている。仕事をもらうのは様似町、えりも町、中頓別町など本当に困っている所に行くことが多い。シーニックバイウェイの事務局長をやっているので、やる気がある店とそうじゃないところはすぐにわかる。秋田県の能代市の道の駅の活性化をしている。檜山振興局の仕事で檜山に来て、料理を食べて感動した。

今度はみなさんがどのような仕事をしているか聞いていきたい。

 

教師・地域おこし協力隊・飲食店

能代:鶉中学校で社会科を教えている。複式の中学校。みんな友達という感じで、学年の枠を超えて活動する。すべての活動を協力してやっている。子どもたちは地道に努力する子どもたちが多くて、リサイクルやボランティア、高齢者の雪かきなどに汗を流して取り組んでいる。札幌酒精のキタサトや鶉温泉に見学に行っている。

保護者も協力的で、小さな学校なので、保護者の協力がないとすすまない。運動会の前の日に保護者の方がグラウンドの草刈りもしてくれる。そういう地域で仕事をしている。

かとう:社会科だけを教えている?

能代:家庭科も教えている。校長先生を除いて5人の先生しかいない。

かとう:小規模校は教頭先生がいないと聞いたことがあるが本当にそうなのか。川合さんの勤めているまちづくり会社のことは町の人は知っているのか。

川合:(まちづくり会社のことは)多分わからないと思う。これまでの活動を簡単に説明すると、地域おこし協力隊として1年半くらい農家の所に行った。厚沢部の農業の現場で働き、実情を知りたいと思った。農業と加工場のお手伝いや館小学校の放課後子ども教室などの現場に関わった。昨年から素敵な過疎会社で働いている。町のPRや情報発信、イメージキャラクターのおらいもファミリーの管理運営、イベントの企画、協力隊のコーディネートや大学生の受け入れを行っている。大きな事業はちょっと暮らしの住宅の運営で、4棟の住宅を管理している。都市部からきたお客さんをお試し暮らしとして、最低1週間から最長6ヶ月滞在してもらう施設の運営をしている。

藤岡:ちょっと暮らし住宅の滞在期間は最長で1ヶ月半くらいか。

川合:2週間から1ヶ月くらい滞在される方が多い。2ヶ月くらい滞在した方もいたと聞いている。

かとう:ちょっと暮らし住宅の設計などはどのように行ったのか。

川合:建設協会さんが設計して建てたもので、メインで施工されたオーナーがそれぞれいる。コンセプトが違うので建設会社のカラーが出ているので、去年はA棟に泊まったけど今年はC棟に泊まってみようという感じで来るリピーターも多い。賃料は1周間6万円で、週単位で2万円ずつプラスされる。

かとう:クリーニング代はとるのか。

川合:レンタル寝具のクリーニング代を徴収することがあるが、ハウスクリーニングの費用はもらっていない(賃料に含まれている)。

かとう:クリーニング代を取るケースが多い。利用する方はどのような地域から来るのか。

川合:東京近郊、名古屋近郊、大阪近郊がある。年齢層では60歳代以上が8割を占める。ご夫婦で来られて、滞在中にお子さん夫婦やお孫さんが来ることが多く、そういう使い方もできる。

藤岡:東京などが多いのは移住フェアなどで発信しているからなのか、ネットなどで見てきているのか。

川合:ネット経由の方ももちろんいるが、毎年東京・大阪・名古屋で開催している移住フェア経由が多い。北海道やちょっと暮らしが好きな人のコミュニティがあって、そこの口コミで来るケースもある。

藤岡:冬の時期は利用率が下がると思うが、冬場の利用率を上げるためにはどうしたらいいのか。ちょっと暮らし利用者で店にも来てくれる方も多い。なので興味がある。

川合:会社の公式な見解ではなく、あくまで個人的なアイディアとしてはいくつかあるが、民間の旅館もあるので、民業圧迫にならないように気をつける必要がある。移住検討を前提としているので、それゆえの制約がある。1泊2泊から使えるようにするのは難しいが、より短期の滞在ができるようにするとか。今は冬場限定で商品券などの特典をつけることをやっている。今は移住を先に見据えた方をターゲットにしているので、家族・親族以外の同居は認めていないが、冬場限定でその条件を緩和する、などの活用のアイディアも考えてはいる。

藤岡:効果があるのかなと思うのは、一週間からの利用は民業圧迫ということもわかるが友達同士の利用も可能となったら、近郊の函館のなかよしのグループが利用して、そこを拠点として観光するようなパターンが取れると思う。なかよしグループが利用するのは利用者のパターンとして今までの民業の中にはないのではないか。圧迫するわけではないのではないか。

荒木:大学生と絡む機会が多いが、サークルの合宿をやるがそのちょっと暮らしを使えるのなら魅力がある。

かとう:旅館の方や商店の方がいるか。ちょっと暮らしの滞在者がいると町内で商品が売れることがある。浦河町は3位のちょっとぐらしの実績がある。ペットと一緒に暮らせる家を建てたり、サラブレッドが見える所に建てている。モデルハウスの隣に新しい移住者の住宅が建っているケースもある。

藤岡:解体料こみで

かとう:北海道に住みたいということを相談されるが、空港の近くや病院の近くを選ぶことも多いが、住宅がみえないくらい田舎に住みたいと思っている人も多い。

荒木:当路に住んでいる。空家を見つけて住んでいる。去年までは2年半くらい農作業をやってきた。商品の販路を開拓している。販売業者と共同開発するか、すでにある商品のシェアをのっとってしまうのが簡単。近くに長万部キャンパスで東京から1年生が毎年きて、寮に入るのだが、夏休みは寮が閉まってしまうため、大学生が夏休みに厚沢部町に住み込みで農作業のアルバイトを行っている。館地区に空家を探して大学生に農作業の拠点として利用している。0円免許合宿を行って、農家さんと任意団体をつくってやっている。農業に対する感覚は3Kだったが、大学生は楽しそうにやる。農家さんの意識も変わってきた。協力隊としてできることとして厚沢部町の交流人口を増やすということをやってきた。厚沢部町の入り口を増やすことでもっと厚沢部を知ってもらう来てもらうということをやっている。

かとう:会場の中で荒木さんの他にハンターの資格を持っている人はいませんか。

荒木:今の猟友会は20人ぐらい。年齢は60歳前後の方が多い。獣肉は半日くらいかけてことこと煮て、アクを取りながら煮ていくので臭みもない。

でも私はアクをとってから圧力鍋で煮てしまう。

藤岡:美和にアイガモの加工場が合ったと思う。

荒木:知り合いも廃鶏になった鳥を出したりしていたらしいが、何年か前に閉じたと聞いている。

かとう:ジビエとか可能性はどうか。

荒木:江差町に「パレス」というイタリア料理屋さんがあるが、そこに鹿肉持って行ったら鹿一頭パーティができたらおもしろいという話はしている。

かとう:滝川に「ラパン」というレストランでは1頭20万円くらい。処理のほうがきちんとしていて、加工して売れるような品質で提供できると良いと思う。

藤岡:家族は妻と子どもが4歳と1歳。妻は保健師。2000年に厚沢部に来て清和小学校という廃校で清和の丘クラブというコミュニティのメンバーで、コンサートや石窯をつくったピザイベントをやったりしている。石窯はみんなに開放している。

今の住宅は清和小学校の元の教員住宅。大学の同級生が隣にいたので、最初はそこに荷物を置かせてもらっていた。2004年に今の家が空いて、次に入る人を募集するということで応募した。結婚して奥さんに来てもらう時にリフォームして暖かい家にした。床と壁をはがしてリフォームした。同じ家の思えないぐらい暖かくなった。それで、新築もできるんじゃないか、という自信がついた。

自分の家の裏手の景色がきれいで、乙部岳がきれいに見える。トイレから見た乙部岳の景色がきれいで、この場所で店をできたらいいんじゃないか、お客さんが来てくれるんじゃないかと思った。材料は地元の製材所にお願いして用意して、清和小学校の体育館を借りて大工仕事の加工場として使わせてもらった。体育館の中で加工をした。冬場に一人でコツコツ墨付け刻み作業をやって、夏前の建前の時には仲間に手伝ってもらった。結局作り始めから開店までは2年半かかった。大変だったけど、楽しかったことは間違いなく、妻の理解もあって開店にこぎつけた。

「冬はお休みですか」ということもきかれるが、ほそぼそと冬場も営業して通年でやっている。お店をやっていて楽しのはいろんなお客さんが来てくれること。客層がよくて、わざわざ求めてきてくれる人がほとんどなためだと思う。お客さんから嫌な思いを受けたことがない。来てくれたお客さんが喜んでくれるのが嬉しい。雰囲気の良い所である程度ちゃんとした味のものを出せばお客さんが来てくれるんだな、と思う。

かとう:最後に5分ずつ、使って厚沢部の良い所を聞きたいと思う。講演のまえに街歩きをするが、今回はその時間が30分しか取れなかった。自分の街の1km圏内で自慢できるものを3つ考えて欲しい。誰々さんのイヌが可愛いとかそういうことでも良いので普段から考えておくと良いと思う。

来場者:厚沢部小学の校庭に大きなイチョウがある。虫取りが学校周辺ですぐにできる。自然と触れ合える。学校周辺には公共機関が集中していて利用しやすい。信金や農協も近くてとても便利でありがたい。

かとう:こちらの校長先生と思しき方におねがいします。

来場者:鶉にいて一番好きなのは自分の学校を表ではなくて裏側から見るのが好き。畑の中に使っていないバックネットが見られるのが好き。相生共和の方を通るとそれを見るのが好き。2つ目は学校の玄関から出て左側にタランボの木があるので春にそれを取って食べたいとおもうのだが、見られると何か言われそうなので遠慮している。最初に赴任した学校は大きなタラノメがあった。いつも取りたいと思っていた。3つ目は鶉温泉は中華料理は美味しいと思う。うちの職員は食いしん坊なので、みんなで行くと一人一品じゃなくて、みんなで回し食べする。

来場者:砂川市から来た。もともと石狩川のカーブする所に町ができている。水害が多かった町で治水事業でダムみたいなものをつくってオアシスパークというものになっていて、そこがきれい。家族や知人が来たら必ず連れて行く。アップルパイが好きでお菓子屋さんのアップルパイが大好きで、そのお店は外では売らないでそのお店でしか出さないもので人気がある。3つ目は僕は地域おこし協力隊で情報発信基地があってそこが働いているところだけどそこが必ずミーティングポイントで、みんなに来てもらいたいと思っている。

かとう:好きなことを確認しあうのはとても大切だと思う。それでは藤岡さんから3分間ずつ。

藤岡:家の裏に見える乙部岳が好きで、今まで2回登りに行った。登って何がしたいかというと、頂上に気象のレーダーが合って車で山頂まで行ける山なのでちょっと下に見られることもある山なのだけれど、きれいに見えるときに登って自分の家を見つけたいと思って2回登った。まだ見えていないので3度めの正直で今度こそ家を見つけたいと思っている。あと店のコーヒーは厚沢部町の水源地で汲んできた水を使っている。往復で30〜40分かかるけどその水のコーヒーと水道水では味が全然違う。同じ水で塩素が入っているかどうかの違いみたいだけれど実際には味が違うので、この水のおいしさはPRのしていないけど、この良さは他にはないんじゃないかと思う。

荒木:家の周りが大好きで、畑に雪しかないのでスノーモービルで遊んでいる人もいる。収穫の取り残しもあるので、農家さんにきいてもらったり、豆は秋が収穫時期で、夏は枝豆になるので何株か抜いてもらったりする。このへんは訛っていて何言っているかわからない。東北訛りが強いのではないかと思う。東北の文化がうまく入り込んでいると感じている。あるもの活かしとよく言われるが、あるものをそのまま前に出しただけでは受け取ってもらえないこともある。私の場合は主に学生がターゲットだったので、あるものをエンターテイメントという側面で切って前に出した。あるものをただ活かしただけでは学生たちは食いついてこない。あるものを切り口を変えて提供すると受け取りやすく、魅力になると感じている。

川合:厚沢部の魅力はチャレンジさせてくれる空気感。協力隊という立場のおかげもあるので、それを切り離して良いとは言わないが、ウェルカムな雰囲気がある。2年目に両親が東京から来たが、近所でよくご飯をご馳走してくれる方が「わざわざホテルに泊まらせるなんてもったいない。私の家に泊まっていきなさい」と言って、宴会を用意して歓迎してくれた。これは凄いことだと思う。また、食生活改善協議会の方など、大変でも楽しそうになにかをやる姿がある。7万8千人いる自分の地元では、そのような大人に出会えなかったので、4,200人のこの町でこの状況は凄い。都会とは全く違う環境で学生にも魅力的な学びの場所だと思う。食べ物に困らないで、いただきすぎて逆に困るくらいの恵まれた環境で、10キロも太ってしまった。現在、その美味しいメークインを使ったコロッケコンテストを企画している。よそからやってくる方に「メークインのまち」なのに気軽に食べられるところがないと言われるので企画した。全国から35くらいのアイディアが集まっている。来週土曜日(19日)に道の駅で最終審査があり、商品になる前の段階のものを試食できるそういう企画を仕掛けながら、活動している。チェレンジできる雰囲気が楽しい。

能代:豊かな自然でのびのびと教育を受けられる環境が素晴らしいと思う。鶉小学校では筏の川下りをやっている。中学生対象の「創造の翼」は沖縄や広島長崎に派遣していただいている。それを振り返って厚沢部町の新しい良さを見つけていければ良いと思っている。過疎と過密を勉強する。過疎の勉強について、君たちは卒業したらどうすると聞くと鶉の子どもたちは戻ってきたいと思っている子が多い。それは素敵なことだと思う。就職や進学のきっかけに町外に出ていくことが多いが、それでも戻ってきたいというのはすごいし、それを授業の中で引き出していきたい。

かとう:20歳代の若い方、40歳代の方がいて、よそから来ている方がここにいて色々な人がいる町は北海道でもレアケース。こういう方がもっと子どもたちの所に出て行って、誇りが醸成されるといいと思う。うまくいえないが、ここに住んでいる方が満足していければいいのではないかと思う。